ソウルから車・地下鉄で約1時間の京畿道水原市。その中心部を取り囲むようにして建つ壮大な都城が「華城です。朝鮮王朝後期の1794年、第22代王・正祖(チョンジョ)が政争により悲運の死を遂げた父を悼み、2年8カ月の歳月をかけて造り上げました。
設計は当時盛んだった実学(現実生活に役立つ実用的な学問)を若くして究めた丁若鏞(チョン・ヤギョン)が担当。朝鮮古来の築城法に加え、石とレンガの併用といった西洋の近代的な建築技法を清(中国)から導入・活用し、優れた機能性と建築美を兼ね備えました。当時の工事記録も完全な形で現存しており、建築史的にも高い価値を有する城郭としてユネスコ世界文化遺産に登録されていました。

総面積130ha(東京ドーム約28個分)、城壁の全長は5.7kmにも至る華城。10年はかかると見られていたこの巨大な計画都市をわずか3年足らずで築き上げた影には、丁若鏞をはじめとする実学者たちの存在がありました。設計者の丁若鏞は築城にあたり、滑車やテコの原理を利用して重いものを持ち上げる現代のクレーン、「挙重機(コジュンギ)」を発明。また建築資材を規格化し運搬しやすくするなど、実用的かつ画期的な工事手法をいくつも編み出しました。こうした実学精神に基づいた知恵と工夫は、大幅な工期短縮だけでなく、民衆の労を軽減したり経費節減にもつながったと言います。

華城西側・東側エリア、華城行宮の見どころ

華城には、城壁に沿って東の蒼龍門・西の華西門・南の八達門・北の長安門からなる4大門や砲台、やぐら、楼閣など41の建造物が現存しています。日本による植民地時代や朝鮮戦争(韓国では韓国戦争)を経るなかで時に大きな被害にも遭いましたが、70年代に政府の計画により復元・改修されました。八達門の西側をめぐる最短コースの「西鋪楼(ソポル)~華西門(ファソムン)」と、東側の「蒼龍門(チャンリョンムン)~東将台(トンチャンデ)」の主な見どころをご紹介しましょう。

西将台の後ろにある西弩台(ソノデ)は、レンガ造りの8角形をした防御施設。弓の一種である製弓(矢を連続発射できる武器)を射る場所として造られました。西弩台に上ると城の西側を見下ろすことができるため、城外の敵の動きを味方に告げる機能もありました。

西将台(地図青4)

 

将台とは将官が軍事を総指揮する場所で、華城には東西に1つずつあります。「華城将台」とも言われる西将台(ソジャンデ)は、四方を見下ろしながら指揮できるよう西側で最も高い場所に建てられています。2階建て構造で優れた建築美にも注目。また水原ワールドカップ競技場や華西門も眺められ、景色も抜群です。